レバレッジの25倍規制と、為替市場への影響
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(日本経済新聞11/7/19から引用)(中略)FXへの規制が、8月から一段と強化される。投機性を弱めるのが狙いで、証拠金倍率の上限(元手の何倍まで取引できるかの数値)は今の半分の25倍になる。
個人の高リスク取引は曲がり角にさしかかり、円高傾向の為替相場にも影響は及びそうだ。
(中略)FX業者と顧客の円対外貨の取引額を業界統計から推計すると、今年1-6月は1営業日平均5.8兆円程度。
一方世界の為替市場での円対外貨取引額(直物)は、昨年4月時点の国際決済銀行(BIS)調査で1日28兆円だ。
今年1-6月も同じ規模だったと仮定すると、FXの比率は約2割。業者は顧客の買いと売りを相殺する例も多く、注文の全てが為替市場に出て行くわけではないが、個人による売買の影響力は大きそうだ。
規制強化のマーケットへの影響は、局面によって異なる。まず、円高が進み始めた局面では、「FX投資家によって円高圧力が緩和される度合いがこれまでよりは小さくなる」(FXプライムの上田真理人専務)。
従来FX利用者は円高局面で外貨を安く買う手法を好みがちだったが、倍率低下を受け、この「逆張り」の円売りが抑制される可能性があるからだ。
一方で、今のように円高がある程度進み、投資家の逆張り的な外貨保有が膨らんだ局面では、逆に円の急騰を防ぐ効果も期待できる。
従来こうした場面では、FX投資家の存在がかえって円高に拍車をかけるケースがあった。
円相場が上がり、外貨の評価額が一定程度に達すると、損失確定の円買いを強制される「ロスカット」という仕組みがあるためだ。
(中略)今回の規制強化によって「ロスカットが相対的に発動されにくくなる」とIT関連会社役員で個人投資家の池谷大輔さん(31)はみている。証拠金倍率を下げると、評価損が膨らんでも、すぐにはロスカット発動基準に達しないためだ。
ただ、そうした相場安定効果がどの程度出るか不透明な面もある。(中略)
8月の倍率引き下げを受けて投資家が外貨持ち高を一斉に減らすと、円高を招く恐れも否めない。新規制に向けて徐々に対応することが期待されている。
FXといえば、一番の特徴はハイレバレッジです。以前は規制がなかったので数百倍というレバレッジも業者によっては可能でした。
株式投資では約3倍、商品先物取引でも15倍くらいがレバレッジの上限ですから、FXはかなりの高倍率だったわけです。
あまりにレバレッジが高すぎると、投資家のリスクが高くなりすぎます。そこで、金融庁は法的規制を導入したのです。
最初の規制はレバレッジを最大50倍に規制し、今回ついに最大25倍になりました。
デイトレードとレバレッジ
このレバレッジ規制については、賛否両論あります。金融庁に寄せられた意見の大部分は規制に反対だったそうです。
まあ、FXの魅力がなくなってしまうわけですし、投資は原則として自己責任ですから、規制に反対というのもよくわかります。
ただ、私としては、さすがに数百倍はちょっと高すぎるのではないかと思います。ちなみに法人口座では、レバレッジ規制がないのでハイレバレッジ取引が現在でも可能です。
そのため、基本的に規制には賛成ですが、かといって投資家のトレード手法を問わずに、画一的に最大25倍にしてしまったのは疑問です。
例えばデイトレード、その中でもごく短時間で売買を終了するスキャルピングなら、数ピプスの変動で損切りをすることが多いです。それなら、ある程度レバレッジが高くても損失はそんなに大きくなりません。
というわけで、こうしたトレード手法をしている投資家の場合、同意書を提出して50倍程度までレバレッジを掛けられるようにする、あとは自己責任という規制の仕方でも良かったと思います。
業者への影響
FX業者としても今回の規制は影響が大きいと思います。ハイリスク・ハイリターンであることがFXの大きな魅力だったからです。
私の場合は最近はデイトレードでなく、もっとゆっくりとした売買をしていますので、レバレッジも高くしていません。しかし、一般にはFXといえば高いレバレッジを掛けてデイトレード、あるいはスイングトレードというイメージがあります。
その特徴が失われれば、FX投資家も減ってしまうのではないかというわけです。一方で、引用記事にはセントラル短資の社長さんが、規制によって投機的なイメージが薄れるから賛成しておられます。
確かにそうです。もともとFXにはレバレッジを低くして外貨預金感覚でトレードするという方法もありますし、外貨預金よりスプレッドは格段に狭いです。
そのため、こうしたFXの違うメリットを見直すきっかけにもなるでしょう。
為替市場でのFXの割合
引用記事で面白かったのは、為替市場に占めるFX取引の割合です。直物(じきもの)は、先物でない取引という意味です。
FXの比率は2割ほどだろうと書かれています。思ったよりもFXの存在感は大きいんですね。
ちなみにFXの注文全てが市場に流れるのではないという点について。店頭取引において、すべての注文を相殺せずにインターバンク(銀行間取引)市場に流すものを、インターバンク直結と呼びます。
一方、そうでなく相殺できる注文は相殺する(マリーする)やり方もあります。
さて、そのFXがレバレッジ規制によって市場にどう影響をあたえるのでしょうか。
まず円高の場合。FX投資家は逆張り(相場に逆らうやり方)を好みがちだと言われています。私も逆張りが好きです。
すると、円高ドル安の場合、安くなったドルを買って円安になるのを期待することになります。そういった注文が増えれば、円高を止める圧力になります。
ところが、レバ規制によってFXで円売りドル買いをする注文が減れば、円高を止めにくくなるというわけです。
ロスカット
一方で、ロスカットの影響も指摘されています。ロスカットとは、投資家が多額の損失を被るのを防ぐために、一定の損失が発生した時点で強制的に決済されることです。
例えば逆張り投資家が円高になってきたので、ドルを買ったとします。ところが、さらに円高が進んでしまうと、手持ちのドルが下がるので含み損が発生します。
含み損とは、損失を確定していないが手持ちの通貨に損失が出ていることです。
そして、もっと円高が進むと、強制ロスカットがされてしまうわけです。ということは、多くの投資家が逆張りをしていた場合、多くのロスカットがされるわけです。
その結果、円買いドル売りの注文が増えて、さらに円高が進んでしまうというわけです。
そして、今回のレバレッジ規制によって、投資家にロスカットが発動されるハードルが高くなりました。つまり、高いレバレッジに比べてロスカットになりにくくなりました。
これまでのところをまとめますと、レバ規制によってFX投資家の逆張りポジションが減るので、円高傾向の現在においては、円高を止めにくくなると考えられます。
一方で、ロスカットも発動しにくくなるので、この点では円高は進みにくくなるというわけです。
ストップロス
続いてストップロスです。つまりあらかじめ入れておく損切り注文です。ロスカットと違い、投資家が自発的に行います。
もしロスカット注文は減っても、同じ辺りでストップロスをしておけば、円高になれば円買いが多くなるというわけです。その結果、円高を進行させます。
これまで見てきたところを総括しますと、FXの証拠金倍率規制によって、理論上は円高を助長しそうです。
ただ、市場に参加しているのはFX投資家だけではありませんので、結局のところ市場への影響がどうなるのかは難しいです。
それにしてもFXへの取引規制が市場に影響をあたえるのですから、世の中とは面白いものです。
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